入試に関するお知らせ

7月21日、授業納めが行われました。

2011年07月21日(木)

本日(7月21日)、授業納めの式が行われました。前日の台風6号接近の影響で、一日遅れとなりました。ここでは、この式で校長先生が話された内容を“ライブ”でお届けします。

 先進国三十数ヶ国から構成される経済協力開発機構(OECD)という組織があります。このOECDが加盟国対象に幸福度調査を初めて実施しました。日本は、所得、労働、教育、健康に関する多くの項目で平均以上という高い位置にあります。
 家計の収入は平均以上、家計の資産(財産)は平均の2倍以上、雇用に関していえば、失業率は平均以下、長いと言われていた労働時間も平均以下です。健康の中の寿命は加盟国中トップです。このように高い位置にありながら、国民の生活に対する満足度(幸福度)は40%と平均の59%を大きく下回っています。日本人は恵まれた生活をしているが、それに満足していないということです。
 他の先進国では、日本より低い位置にありながら、幸福だと考える国民が大勢います。なぜ、日本人の幸福度は低いのでしょうか。考えてみてください。
 少子高齢化という日本の未来を案じているので、悲観的になっているのでしょうか。幸福度、満足度は主観的なものなので、数値化することが難しいという点もあります。
 私なりに調べてみました。統計数理研究所が5年毎に実施している国民性調査のデータを見ると、1990年以降、日本人の将来に対する展望が悲観的になりました。1990年代はバブル経済が崩壊し、大企業の倒産が起きました。今まで右肩上がりで成長してきた日本の経済力が低下し、日本人の自信喪失が起こりました。経済的豊かさに裏付けられていた日本人の幸福感は、経済力の低下と共に崩れ始めたのです。
 東日本大震災を機に日本人の考え方や価値観が変化してきたといわれています。被災した日本人の行動が世界から賞賛されたのは一人一人が利己心を自制し、他者や共同体全体のことを思いやり、助け合い、励まし合って、品位をもって困難に立ち向かっていく姿でした。
 被災地で、支援活動をしている自衛隊の隊長がおっしゃっています。「困っていること、もっと欲しいものはありませんか」と聞くと「いや自衛隊さんが支援してくれるから十分です」と言った方のサンダルは片方が壊れている、服はドロドロ。「風呂に入られていますか」と聞くと「3日前に入れたから十分です」と言う。靴や服の救援物資があると言っても「結構です。私は十分足りていますから、もっと困っている人の所に持って行って下さい」と自分のことよりも人のことを考える日本人がたくさんいるのです。
 物や金を求めるのではなく、精神的豊かさや暮らしの質を大切にする人がいるのです。生きていくために食べる必要があります。生きていくためにお金は必要です。しかし、食べるために生きるのではありません。お金を得るために生きているのではありません。
 中国の老子の言葉に「足るを知る者は富む」というものがあります。足るを知らない者は、満足感を得られません。それがOECDの調査にあらわれた日本人です。足るを知る者は富むが被災地の方々です。自分の欲望をコントロールすることができること、満足することを知って、他のためを思いやる心のある人が、本当に幸せで、豊かな人間であると私は思いますが、皆さんはいかがですか。

 このあと、ダンス部の壮行会があります。ダンス部の方、全国大会では、思いきり踊ってきて下さい。この夏、合宿、通練をする部活の方へ。部活動は自治活動です。自治とは自分で自分を制する、コントロールすることです。まず、高い目標を立ててください。その目標を達成するには努力が必要です。苦しいでしょう、辛いでしょう。でも仲間と一緒なら乗りこえられます。それぞれの部の目標である県大会、関東大会、全国大会へ向けて頑張ってください。
 高3生へ。夏を制する者は受験を制す、と言います。この夏は暑くなりますよ。暑いのは皆さんだけではありません。全国の受験生が暑さに負けず頑張っています。受験も全国大会です。健闘を祈ります。            校長:又木 正登