入試に関するお知らせ

12月21日(水)授業納めの式 校長先生のお話全文

2011年12月21日(水)

おはようございます。今年も残すところあと僅かとなりました。

東日本大震災から9カ月が過ぎましたが、被災地では氷点下の寒さの中でつらい日々を送られている方が、大勢いらっしゃいます。被災された私立学校の生徒さんへ全国の私立学校関係者から義援金が届けられました。その御礼状が東京の本部に送られてきました。その中で一番印象に残ったメッセージを紹介しましょう。岩手県の私立女子高校1年生の手紙です。「このたびの義援金をいただき、本当にありがとうございました。今回の3月11日の震災で私の住んでいた家、思い出の物、そして祖父母・・・多くのものを失ってしまいました。しかしその悲しい思いと同時に、普段私が当たり前に何気なく行っていることが出来なくなることの辛さ、そして有り難さを改めて感じ、つらい経験であったものの、そのことに感謝するという大切な思いを得る事ができたと私は思います。これからは、なくなってしまったものを悔やむよりも今回得た思いを心にしっかり留め、今まで以上に勉学に励んでいこう、皆様の温かい優しいお気持ちにこたえられるよう努力していこうと強く思います。本当にありがとうございました。」

大震災以降、日本人の価値観が変化したといわれています。色々な研究所や大学の研究室の調査では、コミュニケーションや絆、他者への貢献、物より心を大切にするという考え方が強くなってきたという結果が出ています。そのような中で11月にブータン国王夫妻が来日されました。国会で演説なさいましたが、素晴らしかったですね。大震災という未曽有の苦難に遭遇したら、他の国であれば無秩序と大混乱がおきるであろう。日本国民は、最悪の状況下で静かなる尊厳と規律、強い心をもって対処されたと、賛辞を送ってくださいました。

そして、グローバル化する世界の中で勇気と品性を持ち、思いやりのある社会で生きている我々のあり方を私は最も誇りに思うとおしゃっていました。ブータンはヒマラヤ山脈にある貧しい国です。一人あたりのGDP・国内総生産は日本円で年間一四万円、一日四百円で暮らしています。しかし国民の90%が幸せと感じています。物より心を大切にという考えをブータンの人々が日本人に教えてくれました。

 図書館に東日本大震災報道写真ギャラリー「記憶・・忘れてはいけないもの」という写真集があります。写真集ですから読みやすいので是非、手に取って見て下さい。その中に取材した記者のコメントが載っています。「お辞儀」という題です。“ありがとうございます”そのおばあさんは、腰を深々とまげて、前を通る消防団員、自衛隊員、アメリカの救助隊一人一人に丁寧に声をかけていた。3月15日、岩手県大船渡市、死者・行方不明者は500人を超え、3000を超える家屋全壊という被害を出しながら、なぜかそのおばあさんの態度は悠然としていた。おばあさんの自宅は沿岸部に位置し津波で流された。40年前のチリ地震津波でも家を流されたという。言葉を失っていると。“家は又建てればいいのよ。あなたもお仕事ご苦労様だね。職場は無事だから、お茶でものんでいってくださいな”苦難を乗り越えてきた強さとそこから生まれる優しさを感じられた。というものです。

 私はこのおばあさんの強さと優しさが御礼状を書いた女子高生にも引き継がれていると思いました。北鎌生の優しさや気配りはどうでしょう。残念に思う事一点と、嬉しく思う事二点をお話ししましょう。残念な事は北鎌倉駅で本校の生徒が階段を横いっぱいに広がって歩く為に一般の方が電車に乗るのが大変だという電話の件です。大船などの大きな駅では階段の所に人が一人か二人通れるように線が引いてあったり、手すりが設置されている所があります。北鎌倉駅はそのようなものはありません。印や境がない場合にこそ、頭と心を働かせる気働きが必要になるのです。その様なときの心遣いが出来る事が本物だと思います。そのような心遣いが十分でない人がいるのは残念です。嬉しいことその一つは、中学一年生が立会演説会で話してくれたことです。小学校の遠足で北鎌倉に来た時、道が分からず困っていたら、親切に教えてくれたセーラー服のお姉さんがいた。自分は今そのセーラー服を着ています。もう一つは元本校の音楽科主任の先生でこのお近くに住んでいらっしゃる児島先生からのお電話です。とても嬉しいことがあったので先生にお伝えしますと、お電話下さいました。北鎌倉のホームのベンチで電車を待っている時に隣に座っている本校生に私は北鎌で教えていたのよと話しかけました。部活の帰りかと聞くとあるクラブに属しているという返事でした。私も高校時代同じ部活に入っていたという事で話がはずみました。電車が来たのでごきげんようとお別れを行ったときに、その生徒が、話しかけて下さってありがとうございました。と御礼をいったそうです。このような温かい言葉を聞いて嬉しくなりましたとおっしゃっていました。

皆さん、来年も気配りと優しさを大切にしましょう。良いお年をお迎え下さい。

ごきげんよう。