
2013年12月21日(土)
本日は二つ話します。
一つ目は、食に関する話です。
10月下旬、阪急阪神ホテルの食材偽装事件に始り、有名ホテル、百貨店で食材偽装が続きました。
人の目をごまかして、儲けようというのは情けない話です。
得をすることに夢中になり、得をしたときに目を輝かせるような人間ばかりになってしまったら、何とも醜い社会になってしまいます。
一方、12月4日に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されるという嬉しいニュースもありました。
この和食とは、高級な物だけではなく各家庭のおふくろの味も含まれます。
日本の食文化の何が評価されたのでしょう?
四季の区別、季節感を大切にする食文化や、いただきますに象徴される感謝の心が評価されたのだと思いますが、
その根底にあるのは食べ物を大切にしようという文化です。
日本には昔から、食べ物をいただくということは命をいただくこと、食べ物には神が宿っているという考えがありました。
料理の食材である肉も魚も野菜も、もともとは生きていた、つまり命があったのです。
いただくのはその大切な命を頂くのですから感謝の気持ちを忘れてはいけないのです。
特にお米には不思議な力が備わっていると考えられていました。
ある地域では、病気で弱っている人の耳元で竹筒にいれたお米を振ってシャラシャラという音をきかせてあげると元気になると伝えられていましたし、
重い荷物を背負って山を登って行く途中で貧血を起こしたような時に、米粒あるいは飯粒を少しでも口に入れると元気になる。
米粒がなければ米という漢字を手の平に書いて口に放り込むだけでいいと言われていました。
お米は特別な力を持っていると信じられていたのです。
わたしも子供の頃、ご飯粒の一つ一つには観音様が宿っておられる、粗末に扱うと目がつぶれると言われたことがあります。
そのお米で造られているお餅も神聖な食べ物です。お正月、神棚にお供えした後でお雑煮にして食べたのです。
お米を取った後の藁にも霊力があると考えられていましたので、神棚には藁で作ったしめ縄を飾るのです。
しめ縄は神との境界を表します。しめ縄の内側は神様の世界なのです。
初もうでに行ったら新しいしめ縄を確認し、お参りしてきて下さい。
二つ目は、学園の下にある歴史上のスポットについてです。
ガイドブックや風土記にものっていない小さなスポットです。
学園の坂を下って行くと藤源治橋という橋の手前に右に曲がる細い路地があります。
この道は近所の方の生活道路ですので皆さんは利用できませんが、この道を20メートルほど行った所に大きな銀杏の木があります。
この銀杏の木は坂の途中から頭が見えますし、県道の駐車場の奥に見えます。
鎌倉時代にこの銀杏の木からお肉屋さんの裏のあたりに関所があったということです。
皆さんの通っている県道は鎌倉に通じる鎌倉街道ですが、この北の関所が学園の下にあったのです。
もうひとつ、この大銀杏の近くで昭和9年、
今から80年前に鐘紡の創業社長である衆議院議員の武藤山治さんが暴漢に銃でうたれ、後日、鎌倉の病院で亡くなっているのです。
本校にある千草庵は武藤さんの別邸です。
鐘紡というと、今は化粧品会社ですが、もともとは鐘淵紡績という繊維会社で大正から昭和の初めにかけて、
武藤さんが世界一の紡績会社にしたのです。
昭和の初期は昭和恐慌で景気が悪く町中には失業者があふれていた時に、
イギリスをぬいて世界一の紡績会社にしたということは日本にとって大変意義のあることです。
武藤さんは社員から慕われていたそうです。
当時紡績会社で働く女工さんは、女工哀史で語られているように、
牛馬なみのひどい条件で働かされていましたが、武藤さんは女工さんの為に、
布団の長さや、枕の高さ、食事の質まで自分で確認し少しでも良い条件で働いてもらったそうです。
兵庫県明石海峡大橋の近くに県立舞子公園があります。
ここに明治時代には珍しい西洋館である武藤さんの自宅が保存展示されています。
ここに行った時に洋館内に、晩年は北鎌倉の別邸に住んでいたという説明が書いてあり、うちの千草庵のことだと思いました。
何故、北鎌倉に別邸を建てたかというと、
政財界を引退した後に恩師である福沢諭吉の創った時事新報社の経営がうまくいかなかったので、
東京にある会社の経営を引き受け、北鎌倉から通ったということです。
この新聞で帝人事件という政財界の汚職問題を厳しく糾弾しました。
武藤さんの伝記を読むと、当時横須賀線には北鎌倉という駅はなく、武藤さん達が国鉄に働きかけてできたと書いてありました。
本学園が譲り受けた建物は二棟ありました。
一つは今も残っている平屋建ての千草庵で、
この建物は大正時代に建てられたものを京都から移築したということをきいたことがあります。
もう一棟、現在の図書館の所に二階建ての洋館があり、両方とも部活動の夏合宿などの宿泊場所に使用されていました。
明日から冬休みになります。健康と安全に気をつけて、良い年を迎えて下さい。
高三生にとっては、クリスマスもお正月もありませんが、3月に全てまとめてお祝いして下さい。
前のお知らせ:12月11日(水)中学1年生対象に歯磨き講習会が行われました。
次のお知らせ:受験希望の皆様へ(年末年始のお問い合わせについて)