入試に関するお知らせ

平成25年度後期終業式が行われました。校長先生のお話全文をご紹介します。

2014年03月21日(金)

 25年度が本日で終わります。通知簿を手にしたら一年間の自分を静かに振り返ってみて下さい。
本日は私が新聞から学んだ事、皆さんにも考えてほしいことを二点お話します。 

 一つ目は、ある新聞に掲載されていた高校生エッセイコンテストの入賞作品についてです。
この高校生はとある高校3年の女子生徒です。作文は海外ボランティアについて取り上げてあります。
ある医師の体験談に感銘を受け、海外ボランティアに興味をもった筆者は、
まず春休みに東日本大震災の被災地でのボランティアに参加します。
そこで自分の目で見て、肌で感じることの大切さを実感します。
夏休み海外ボランティアでフィリピンに行く決意を固めその準備をします。
担任の先生に報告に行くとこっぴどく叱られました。
「受験生がボランティアなんかやってる暇があるのか?だいたいそんな活動は、やっている側の偽善だ。
お前ひとりが何かしたって、世の中そう簡単には変わらない。きまぐれで施しを受けたって返って不幸になるのだ。」
今までボランティア活動に参加すると言えば、たいていの人に賞賛された。
中には涙を流して賛同してくれた友達も多かった。
それなのに受験生、偽善者そんな言葉が渦巻いて私の心はぐらついた。

そこで質問です。皆さんがこの方の立場だったらどうしますか。海外ボランティアをやめますか、それとも参加しますか。
やめる方、辞める理由は何ですか。先生の言われた通り受験生だからそんな暇はないということに気付いたからですか。
参加する方、理由は何ですか。自分のやりたいことだから他人からとやかく言われる筋合いはないと思ったからですか。
この方の作文は次のように展開します。

悩んでいた本人を見かねてお母さんがこう言いました。
「世の中いろんな考えの方がいる。信念も生き方も違う。でも反対意見の中にも大切な事が隠れている。
自分の生き方を決めるのは、あなた自身。あなたはどうしたいの?」
そう言われてはっと気付いた。
わからずやで冷酷な先生だと決めつけていたが、もしかしたら先生は私の心のおごりに気付いて戒めたのかもしれない。
自分のやるべきことをまずきちんとやりなさい、
そしてボランティアをするなら決して思いつきや気まぐれでなく継続しなければならないと、
そうおっしゃったのだと考え直した。
次の日、再び先生を訪ね、「受験勉強もおろそかにせず頑張ります。一週間だけボランティアに行かせてください。」
と補習欠席の失礼を詫び、ボランティアへの熱い思いを語った。すると先生は「よし頑張って来い。」と応援して下さった。
ということです。この話から我々が学ぶべきことは、
お母さんが反対意見の中にも大切なことが隠れているとアドバイスをしてくれました。
それを素直に受け入れ、反対意見の中に隠れていた大切なことに気付いて、自分を振り返りました。
翌日先生に失礼を詫び自分の熱い思いを語ったことです。

この方の場合は参加するということになりましたが、取りやめることも又正解の場合もあります。
いずれの場合でも、最終的に決めるのは自分です。皆さん、大切なことは責任転嫁をしないということです。
他人のせいにしないということです。やめた場合、その理由を先生のせいにしないということです。
参加した場合、勉強が遅れたとしても、母親のせいにしないことです。最後は自分が決めたのです。
もうひとつ大切なことは、何かやる時に、やりたくても、やってよい場合とやってはいけない場合があるということです。
逆にやりたくなくてもやらねばならない時とやらなくてよい時があります。
その判断は自分がしなくてはなりません。重要な判断をするときの為に、毎日勉強しているのだと思います。

もうひとつの記事は東日本大震災3周年に関する記事です。
震災で親を亡くした子供は岩手・宮城・福島の3県で1500人、その中で両親を失った子供が241人もいたのです。
皆さんご両親が亡くなったらどうしますか。大変な辛さですね。
でもその苦しさに耐えている人がいることを我々は忘れてはいけないのだと思います。
もうひとつ3月11日に生まれた子供も被災3県で104人いるのです。その中の一人の方の事を書いた記事がありました。

8時間の難産で生まれたさくらちゃんは暖房が止まりバスタオルにくるまれて母親の腕の中で一夜を明かし、
産湯をつかったのが10日後でした。
寒い時に生まれたから周りを温かくできる人になって欲しいと、ひらがなでさくらと名づけました。
震災3ヵ月前バス停で「えっちゃんだきよね。」と母親をよびとめた女性がいました。
ためらいながら、あなたを産んだ妙子ですと告げた。
生まれたばかりの悦子さんを保育器に残したまま病院を去った実の母親でした。
子供がもうすぐ生まれることを伝えると、女の子だと思うよとお腹をさすってくれた。
どうして私を置いていったの。ずっと聞きたかったことは質問できなかった。
あれから3年最近になって悦子さんは左ほほに、
妙子さんは右ほほに出来ると言うえくぼが桜ちゃんは両方に出来ることに気付いた。
さくらの中に母がいる。間もなく迎える3回目の母の命日と娘の誕生日。
お母さんに代わって生まれてきてありがとう。ケーキに3本のロウソクを立ててお祝いするつもりだ、という記事です。
私が感動したのは、この若いお母さんが自分の娘の中に母親がいると言ったことです。
自分を置いて出て行った母親を怨みに思うのはごく普通の感情です。
でも自分の娘のえくぼに母の姿を見た時に母親を許す気持ちになったのだと思います。
どんなにひどい親でもその親がいなければ自分はこの世に存在しないのです。
悦子さんの実母を許す気持ちがやがてさくらちゃんに伝わり、
きっとさくらちゃんは名前の通り、周りを温かくできる人になると思いました。

皆さん新聞や本を読み、沢山のことを考えて下さい。