

2015年03月19日(木)
本日で26年度が終了いたします。
今日は二つ話をします。一つは卒業生の活躍です。この方は平成20年度に本校を卒業後、首都大学東京に進みました。大学卒業後、東京大学大学院の修士過程で勉強をしていましたが、昨年の秋に博士課程の試験に合格し、今年の4月から東大大学院医学系研究科博士課程で水島昇というノーベル賞最有力候補の先生の下で修業が出来ることになり喜びでいっぱいだという手紙がきました。オートファジーという細胞の異常な物を分解して除去する取り組みで、話題のES細胞を見ることのできる顕微鏡を使って研究しているそうです。自分で撮った細胞の写真や説明図も送ってくれましたが私には難しくてわかりません。手紙の中で、中学生の頃苦手だった学校を大好きにしてくれた北鎌のおかげでこの先も研究を続けることが出来ます。感謝の心を忘れず頑張ります。そして卒業生として後輩の希望となれるよう、世界中の人々の力になれるよう精進していきたいと書いてあります。一年前に学校に来た時には、日本で初めての女性ノーベル賞受賞者になれるように頑張ると夢を語っていました。この方は中学の時他校から転校してきました。手紙にあるように前の学校では辛い日々を送っていたのだと思います。北鎌の水があったのでしょう。そして今のような自分の研究の道に打ち込むことが出来たのは、中高時代の友達や先生方の笑顔だと書いてあります。皆さんもよき友と充実した学園生活を送ってください。そしてこの先輩のように大きな夢を持って27年度も自分の道を進んでください。
二つ目はイスラム教についてです。中二の道徳の授業で学年末に授業評価を書いてもらっています。授業で印象に残ったことを挙げてもらうと毎年三大宗教の話が印象に残ったと書いてくれる人が何人かいますが、今年はイスラム教やイスラム国について具体的な感想がありました。なかなか鋭い指摘ですので紹介して関連説明をします。尚、ご存じだと思いますが、イスラム国は国家ではありません。過激なテログループのことです。感想文を紹介しましょう。
「今回のイスラム国の話が激化する前にイスラム教の事を知って、今、後藤さんと湯川さんの事件が起こり、何も知らなかった時に比べて、こんな理由で事件を起こしてしまったのだ。イスラム教のアッラーは、こんなことをしろとなんて望んでないのに何故してしまうのだろうと思ったりして深く考えるようになりました。」「私はずっとイスラムの人々は残酷なテロリストと思っていました。でもそれは偏見で、そういう酷いことをするのはほんの一部だと聴いた時とても驚きました。テレビなどでもイスラムの人は悪い人ばかりでない事を教えてほしい。」「先生の授業を受ける前は、イスラム教は悪い宗教だと思いこんでいましたが、イスラム教について知って行くうちに、自分が大きく誤解していたことに気が付きました。女性の地位が低いというのは不満ですが、悪い人はごく一部だと分りました。」
この3名の方の話をまとめるとポイントが四つあります。
1、後藤さん湯川さんがイスラム国に殺害されるという残虐行為が報道され、イスラム教は悪い宗教で残酷な人たちだととらえた。
2、ひどいことをするのはごく一部の人であるのにイスラム教全体が悪だと言う誤解がある。テレビなどできちんと伝えてほしい。
3、アッラーは今回のような残虐な行為をしろとは言っていないのではないか。
4、女性の地位が低い
なかなか鋭い指摘です。先ずイスラム教徒は好戦的で残虐だという誤解がある、ということについて説明します。
イスラム教徒は弱者を思いやり、異教徒との平和共存を求める宗教です。後藤さん湯川さんを殺害したイスラム国のメンバーの行為はイスラムの教えに反するものであり、真のイスラム教徒ではありません。このような誤解が何故生じるか。イスラム教についてきちんと報道されていない、きちんと伝えられていないからです。高校の倫理の教科書を調べてみました。キリスト教の説明は9ページ、仏教は8ページ、に対してイスラム教はわずか2ページです。これではイスラム教を理解することは不可能です。
イスラム教がキリスト教や仏教と同様に弱者を思いやる宗教であるということについてお話します。キリスト教の教えの根幹は神への愛と隣人愛です。隣人・となり人を愛するとは、何事でも自分のしてもらいたいことは、他の人にもそのようにせよ、という教えです。仏教の慈悲は全ての命あるものをすすんで愛することです。両方とも教科書に詳しく説明してあります。一方イスラムの弱者のいたわりについては教科書では触れられていません。教科書に載っているのは、欄外に五行・5つの行いとしての断食です。断食は日の出から日没まで飲食しないという記述で終わっています。ここから弱者思いやりの精神を理解することはできません。私が東京にあるイスラム寺院にいってイスラム教のことを伺ったことがあります。何故断食をするか。その答えは同じような苦しい状態に自分を置いて、貧しい人、飢える人のことを実感し、弱者を思いやる心を養うためにするのだと教えてくれました。
次にアッラーは今回のような残虐なことをしろとは言ってないのではないか、ということについてはその通りです。人質を虐殺したり、自爆テロをしろとはアッラーは言っていません。イスラム国のメンバーは今回のような残虐な行為を「ジハード」聖なる戦いと位置づけていますが、ジハードは神の為に自己を犠牲にして戦う場合でも自己防衛、正当防衛に限られているのです。テロ集団イスラム国の行為はアッラーの教えに反しています。
女性の地位が低いという指摘は確かです。ノーベル平和賞を受賞したマララさんが訴え続けている通りです。
皆さんマスコミの報道に惑わされず、これからも国内外の動きに大いに関心を持ち続けて下さい。
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