
2017年11月02日(木)
「オペラの演目が決定しました。上演するのは『ヘンゼルとグレーテル』です。」そう担任から告げられた時の皆の反応は、あまり良いものではなかった。先生の提案を却下する程迄に、これといってやりたいオペラがあった訳ではない。
然しながらあまりに幼稚だ!そう思ったのである。
我々は完全に侮っていた。
題名だけを見るとどことなく可愛い印象を受けるこのオペラだが、リズムの複雑さ、音程の取りにくさ、そしてオペラを一から作るということは、想像をゆうに絶するものだった。
我々の前には、徐々に暗雲が立ちこめていった。
中々形が見えてこないオペラに皆焦り出し、どこへもぶつけられない自分への憤り、周囲からの圧力に押し潰されそうになった。然しそんなことは我知らずと、嘲笑うかの如く刻々と迫りくる“本番”の二文字。
そしてついに、先生方の間で「二音のオペラが危機的だ」と囁かれる始末。
49期史上、最悪の事態である。
然し、それが我々に火をつけた。
我々の体に眠っていた「二年音楽科」という或る種のプライドが目を覚ましたのである。
バラバラだった皆が、同じ方向を向いた。
“絶対に成功させてやる”
その想いが一つになるのを、私はこの目ではっきりと見た。
この先我々が進む道は、決して楽な道ではない。
そこには大学受験を始め、数々の難所が待ち受けている。然し、『ヘンゼルとグレーテル』というオペラを此の19人で作り上げた、歌いきった、演奏しきったという事実は、必ずや我々を前進させてくれるだろう。
たった19人。されど19人。
“二音にしかできない、二音だけの世界”は、笑顔とともに幕を閉じた。 (H.K.&A.Y.)
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